ENEOSイノベーションパートナーズ合同会社

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事業紹介未活用エネルギーの有効利用に向けた取り組み

先端技術

未活用エネルギーの有効利用に向けた取り組み


排熱を利用した
温度差発電による省エネ技術

担当者近影

担当者紹介

古田 智史Furuta Satoshi

研究所にて石油化学品の付加価値向上、石油精製触媒開発、超重質油の付加価値向上、バイオ燃料製造技術開発、水素の貯蔵・輸送技術開発などを担当。現在は、低炭素社会、循環型社会を実現するための革新的な技術・サービス事業創出を担当している。工学博士。

2020年5月現在、COVID-19が世界中で猛威を振るい、人々の移動が制限された結果、ここ数カ月においては世界のエネルギー消費は減っていると思われます。これはあくまで一時的なもので、引き続き地球温暖化や気候変動は深刻な社会課題であることには変わりありません。これまで享受してきた化石燃料や石油由来の製品の便利さを、人類が完全に手放すことができるのか、というと、おそらく難しいのではないかと思います。その前提で、今後も、世界全体のエネルギー需要は大きく減らないことが予想されています。

このような中、将来にわたって誰もがエネルギーを利用できるようにするためには、省エネルギーの推進と、再生可能エネルギー由来のエネルギーの比率を増やすことが必要になってきます。

また、私自身にとっても、地球環境問題の解決は、まさにライフワークです。環境に意識を向けるようになったきっかけは、中学生のころにリアルタイムで接した四大公害病に苦しむ人たちのニュース。報道を通して届く、被害者やその支援をする人々の想いに共感し、時には怒りに震えることもありました。このような悲惨なことが繰り返されないために、自分に何かできることはないか?との思いでたくさんの本を読み漁り、たどり着いた答えが「技術開発」でした。

そして、大学で化学を専攻し、「資源を使う側として、エネルギー使用量の低減や環境負荷の低減に取り組みたい」と思いでENEOSに入社しました。入社後は研究職としてエネルギーに関する技術開発を担当してきました。また現職においては、取り組んでいるテーマの一つとして、世の中のいろいろなところに眠っている、まだ活用されていないエネルギー(未活用エネルギー)を利用するための技術探索があります。地球環境問題の解決に向けて正面から取り組めることに喜びを感じつつ、日々調査や協業に向けた検討を行っています。

コンパス

ENEOS×未活用エネルギー

世の中には、まだ活用が可能なエネルギーが多く存在しています。これを我々は「未活用エネルギー」と呼んでいます。未活用エネルギーの主だったものとして、もっと利用できるはずの太陽光や地熱、波力、そして未利用エネルギーがあります。

未活用エネルギー 幅射熱などになって、活用されていない太陽光 海の波力 地熱 未利用エネルギー(排熱など)
代表的な未活用エネルギー

未利用エネルギーとは工場排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱、外気温との温度差がある河川や下水、雪氷熱など、有効に利用できる可能性があるにもかかわらず、これまで利用されてこなかったエネルギーの総称です。

未利用エネルギーの中でも、特に量が多いのが「排熱」です。モノやエネルギーを作り出すときには、必ずと言って良いほど熱が必要ですが、その熱の大半は使われることなく排出されています。しかも250℃以下のものが大半を占めています。ガスの排熱量の例を示します。

縦軸:排熱量(Tcal/y) 横軸:排熱温度(℃) 紙パルプ 窯業 石油 清掃 鉄鋼 化学 電力などを棒グラフで表示
業種別、温度域別ガス排熱量

国内だけを見ても、あらゆるところで排熱が発生しています。

排熱の発生源の例

今後、地球環境に対する負荷を低減すべく、こういった排熱を利用した発電技術が省エネルギーの一つの選択肢になっていくと考えています。ENEOSにおいて、現時点では、このような技術に関し特筆すべき強みを有しているわけではありません。一方で、排熱の利用はENEOSグループ理念に掲げる、「エネルギー・資源・素材における創造と革新」を実現するための大きな可能性を秘めていると考えています。

活動事例

Eサーモジェンテックとの協業

背景・取り組みの内容

排熱から発電するための技術として私が注目しているのが、「温度差発電技術」です。温度差から発電するため使われるのが「熱電素子」と呼ばれる電子材料です。熱電素子は、長い研究の歴史を持っていて、その効率も向上し続けています。にも拘わらず発電技術として大きな規模で社会実装された例はまだほとんどありません。この理由は2つありました。
一つ目は、素子を接触させる発熱体の形状です。従来の技術では、固いセラミックスの板の間に多くの素子を挟み込んだタイプのモジュール(以下、熱電モジュール)が使われてきました。このため、排熱発生源の形状にセラミックスの板の形状を完璧に合せて製造する必要がありました。

従来の発電モジュール
(出典:Eサーモジェンテック社 HP)

二つ目は、温度差を維持することです。具体的には、下記の図に示すように、熱電モジュールを貼り付けた発熱体の面Aと、放熱側の面Bには温度差がなければなりません。

熱電素子の構造(イメージ)

したがって、Bの側に放熱、または冷却機構を備えることが必要です。一方で熱電モジュールの形状の自由度が低いこともあり、効率的な放熱・冷却が困難でした。そのため、これらの課題をクリアする技術のある会社はないか、学会等で情報収集を行う中で出会ったのが、今般、協業することになったEサーモジェンテックです。
同社は、熱電素子を固定する材料に柔軟性を持たせたことで、どのような形状の発熱面に対しても発熱体の面と熱電モジュールの間に空隙を作ることなく貼り付けることが出来るようになりました。

Eサーモジェンテックの発電モジュール
(出典:Eサーモジェンテック社 HP)

また、このことにより放熱・冷却の効率化が可能になっています。
また、排熱利用の将来に関しディスカッションをする中で、「捨てられる熱がゼロになっている世界」のイメージをお互いに共有でき、バランスの取れた経営陣と強固な研究開発体制にも魅力を感じました。
一方、同社とのビジネス立ち上げも含めた、「温度差発電」に取り組むことに関しては、社内においてはスケールや収益性の観点を中心に、時に激しく議論を交わしたこともありました。しかし、法制面の後押しや技術革新によるコストダウンが期待されること、そして、排熱の利用が、エネルギー利用による環境負荷低減の切り札となりうることを、関係者に粘り強く説明し、2020年3月、同社と資本業務提携をするに至りました。

今後の展開

このように、現時点では、温度差発電技術の社会実装に向けて一歩を踏み出したばかりですが、最終的には、「日本中の家やオフィスビルがエネルギーの自給自足をしている」という状態を目指したいと考えています。日本国内を中心に、エネルギーの安定供給を手掛けてきたENEOSが、今度は、エネルギー供給形態のゲームチェンジャーとしての役割を担えたら、という夢もあります。
まだ活用されていないエネルギーを様々な場面で利用したいとお考えの企業や研究者の皆様、ぜひ、私たちとともに、低炭素社会の実現に向けた一歩を踏み出しませんか?ご連絡をお待ちしております。